相続税とは人が死亡することを原因として、一定額以上の財産を譲り受ける人(相続人といいます。)に対して課される税金のことをいいます。税金には大きく分けて3つの種類があります。「所得」に対して課されるもの(所得税など)、「消費」に対して課されるもの(消費税など)、「資産」に対して課されるもの(固定資産税など)があります。相続税には死亡時にその人の一生の税を清算することにより生存中の所得税の不足分を清算するという機能と、国が税として徴収し社会に還元する「富の再分配」という機能があります。また、一種の不労所得(働かないで得た所得)に対する税金のため、相続税は最高50%の高い税率で課されます。
相続財産として相続税の課税の対象となるものは、次のものが挙げられます。
亡くなった人(被相続人)が所有していた財産以外のものにも相続税が課される場合があります。いくつか具体例をあげます。
被相続人に債務があれば、相続の放棄をしない限りは相続人が負担しなければなりません。そこで、債務は相続財産から差し引くこととされています。これを「債務控除」といいます。債務控除の対象となるものは次のとおりです。
社会政策的な配慮等から、一定の財産については相続税が非課税となります。代表的なものをいくつか列挙します。
①墓石、墓地、仏壇、神棚、祭具など。
②国や地方公共団体、公益法人などに寄附した場合の寄附財産。
③香典、花輪代、弔慰金(業務上の死亡は賞与を除いた普通給与の3年分まで、その他の死亡は6ヶ月までの金額)
④心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の受益権
⑤相続人の取得した生命保険金等で法定相続人1人当たり5百万円で計算した金額
⑥相続人の取得した死亡退職金で法定相続人1人当たり5百万円で計算した金額
⑦特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭(申告期限までに)
⑧一定の要件に該当する公益事業者が取得した公益事業用財産
上記(1)で、人が死亡することを原因として財産を譲り受ける人に対して相続税が課されることを説明いたしました。それでは将来の相続税の課税を回避するため被相続人が生前中に、財産を他人にタダであげた(贈与した)場合にはどう扱われるのでしょうか。この場合には、「贈与税」という税金が財産を譲り受けた人(受贈者といいます)に対して課されることとなります。つまり、相続税が課税できない分を贈与税によって補おうというものであり、贈与税は相続税を補完する税であるといえます。贈与税も「不労所得」に対するものであるため、最高50%の高い税率ですが、相続税よりも低い金額から課されてしまいます。相続税を回避する手段として「贈与」を用いることはかなり制限されることになります。
贈与税のかかる財産は、相続税のかかる財産と基本的に同じとなります。しかし実際に贈与をした又は贈与を受けたと思っていなくとも、贈与税が課される場合があります。これを「みなし相続財産」といいます。形式上は贈与ではないのですが、税法が贈与をしたとみなして課税するわけです。次のようなものが該当します。
時価よりも著しく低い価額で売買した場合に、贈与があったとみなされます。例えば親から子へ、時価1億円の土地を4千万円で売買する契約を結び、実際に売買契約書も作成して金銭のやり取りもし、登記の名義も変更したとします。この場合、時価の1億円と4千万円との差額6千万円について親から子へ贈与があったものとみなして贈与税の課税がなされます。
また、以下のように取り扱われます。
被保険者:父 保険料負担者:母 保険金受取人:子 といった保険契約があるとします。父が死亡した際に保険金は子に入りますが、この保険金は保険料を負担していた母から子へ「贈与」したとみなされて贈与税の課税の対象となります。父の死亡の際のみなし相続財産として相続税の課税対象となることはありません。
財産を一定の第三者(受託者)に預け、運用や処分をしてもらうことを「信託」といいます。財産を預ける者を委託者といい、信託による利益や元本をもらう者を受益者といいます。このうち受益者が委託者自身でない場合には、受益者は委託者から贈与を受けたものとみなされます。
年金契約などに加入し一定の期間掛金を払い込むと、一定の年齢に達した場合など年金の給付事由が発生した場合には、年金の支給が受けられます。この場合に、掛金を払い込んでいたのが夫、年金の受給者が妻であるといったケースでは、夫から妻へ定期金受給権の贈与があったものとみなされます。
債権者が債務者に債務の免除をした場合や、債務者に代わって第三者が債権者に債務を弁済した場合には、債権者あるいは第三者から債務者への贈与があったものとみなされます。ただし、債務者である子が資力を喪失し、扶養義務者である親がやむを得ず債務を引き受けた場合には、贈与税の課税は行われません。
主な贈与税の非課税財産として下記のものがあります。
①法人からの贈与により取得した財産・・・所得税・住民税の課税となります。(一時所得など。)
②扶養義務者から生活費や教育費として贈与された財産で通常必要なもの
③一定の要件に該当する公共事業者が取得した公益事業用財産
④一定の特定公益信託から交付を受ける金品
⑤心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の受給権
⑥公職選挙の候補者が贈与によって取得した財産
⑦特別障害者扶養信託契約に基づく信託受益権で6千万円までのもの
⑧相続開始の年に非相続人から贈与を受けた財産・・・相続税の課税となります。
⑨債務超過の場合の債務免除、債務の肩代わり、低額譲受け・・・債務者による弁済が困難である場合に限ります。
⑩香典、お祝金、見舞金などで社会通念上相当と認められるもの
⑪離婚に際しての財産分与で社会通念上相当と認められるもの
①贈与税は、その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計額をもとに課税します。
②財産の合計額から基礎控除額110万円を控除します。
③控除後の残額に対し下記の税率を乗じ、一定の控除額を差し引いた額が贈与税の税額となります。
<贈与税の速算表>
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
- |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,000万円超 |
50% |
225万円 |
(例)贈与財産の価額の合計が500万円の場合
基礎控除後の課税価格 500万円-110万円=390万円
贈与税額の計算 390万円×20%-25万円= 53万円
贈与を受けた年の翌年2月15日から3月15日までの間に、110万円を超える贈与を受けた人は、贈与税の申告書を作成し税務署に申告・納付しなければなりません。
生前に贈与をされた財産の合計2,500万円までについて贈与税を非課税とする代わりに、相続発生時にはその贈与財産と相続財産を合計した金額で相続税額を計算するという制度です。
この制度を利用すれば、2,500万円に達するまで何度でも贈与税が非課税となり、2,500万円を超えた場合には、超えた額に対して一律20%の贈与税率となるという扱いを受けることができます。ただし、
といった制限がつきます。また、父、母両方からこの制度の贈与を選択すると、5千万円までが非課税となります。
平成22年12月末までの時限措置ですが、一定の住宅取得や増改築のための資金の贈与に限っては、非課税枠が1千万円増額され、最大3,500万円までが非課税となります。この場合の贈与に限っては、親の65歳という年齢の制限がありません。対象となる家屋の要件は下記のとおりです。
増改築の場合の要件は以下のとおりです。